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おがくずをここに捨てれば身綺麗になれるはずだと思ってました
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『愛想のアポトーシス』

金魚ならよかったろうに ひとかきでたなびくヒレが君を惑わす

うずらならよかったろうに 産みたての命をいっそ丸飲みにして

イルカならよかったろうに ラッセンに見初められれば億万長者

ワインならよかったろうに 血流と深い契りを交わして巡る

時計ならよかったろうに 秒針が静止する日を待ち望む鳩

心ならよかったろうに 快楽も絶望もまた生存の糧

海辺ならよかったろうに 常闇の調べ悲しく立つ波もなし

しし座ならよかったろうに 夏空に息が詰まってしまうほど、愛

かの人とそっと結んだくちづけはあるいは赤くあるいは青く

そよ風よこれを翼に乗せてくれたとえ私が何であっても

<「未来」No.719 2011年12月号>

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未来詠草、最後の作品です。

未来の彗星集のシステムは、
加藤先生が一番いいと思った作品がひとつ、
「未来広場 みらい・プラザ」で紹介されます。
彗星集の欄で、その月に良いと思った五作が前置きされ、
後、住所が北から南の順番で掲載されます。

今回「中森つん」を前面に出し切ったこの作品が、
その五作のうちのひとつに選ばれ、加藤先生から、
「彗星集の中でも新しい世代だが、すでに個性を開示している」
とお褒めの言葉までいただきました。
ありがとうございます。

わずかな時間でしたが、お世話になりました。
結社の皆さん、これからのご活躍を願っております。
特に同期の女性陣におかれましては、
その才能を生かし、伸ばし、時には悩み、
いつか御歌を世間に認めさせてください。
応援は出来ないかもしれませんが、見守ります。

加藤先生、貴重な経験をつませてくださったこと、
誠に感謝いたしますと同時に、
こうして結社を抜けることを選んだこと、
恩を仇で返すようなこと、申し訳ございません。

ありがとうございました。

中森 つん(未来・彗星集所属)
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『EXIT』

じんじんと爪の先から騒ぎ出し眠らせないであなたが欲しい

明日の朝私のことを忘れてもくちびるが覚えているでしょう

出会いから幾年経った恋だって灼熱色に燃え続けるの

くらくらとやられてしまうその瞳へと溶けていく熱になりたい

早鐘の鼓動の渦に巻き取られ頭が痛い愛が足りない

優しさを求めて愛を貪って空っぽになるまで奪い合う

信号は赤い それでも追いかけるアクセルを踏む強さを持って

怖くない(でも泣きたいよ)臆病な心を煽る波浪警報

エンブレムぼろく無様に輝いてそれは弱さを受け入れた証

たくさんの理由と思い出の中で選んだ白いパズルのピース

アイコトバ淡い未来のプロローグ二人でドアを開けれるのなら

解答を求めて人は生と死のはざまで揺れて何も出来ない

サイレンが鳴り響いてる夜なのに(聞こえないふり)口づけをする

雨音のオーケストラが投げ出した茶番みたいな別れの理由

「たられば」を語る人生計画はいらない風見鳥よ導け
皆様お久しぶりです。中森つんです。
体調不良で寝込む日が続き、気がつけばもう12月です。
アインシュタインの相対性理論が身にしみます。

さて、以前から「中森つん」の短歌活動は、
年内いっぱいであることを宣言してきました。
たくさんの方々から
「やめないで」「続けて」「のんびりやっていこうよ」
とのお言葉をいただきました。
本当にありがとうございます。
ですがやはり、この短歌の世界における私の活動は、
予定通り年内で終わらせていただくことを、
あらためてご了承ください。

と、ここでひとつ問題が発生いたしました。
持病であるうつ病と統合失調症が悪化し、
このたび入院することが決まりました。
しばらく前から担当医とカウンセラーさんと相談し、
話を進めてきたことなのですが、
皆様にご報告することが遅くなってしまいました。
申し訳ございません。

活動終了の仕方として考えていたのが、
・未発表連作の発表
・未来詠草12月号のアップ
・中森つん最後の連作の発表
これらを12月中、徐々にと考えておりましたが、
入院が1~2週間以内となりそうなのです。

というわけで、いろんなことを前倒しにしつつ、
作品発表をさせていただきます。
そして、歌人「中森つん」を終わりにします。

語りきれないことがたくさんありますが、
私の短歌に出会ってくださり、
その短歌を好きだと言ってきただき、
誠にありがとうございました。

詠えなくなったカナリアは、
どこかの空へはばたいていきます。
どうか、どうか、私の想いに気づいてください。
そして、ゆっくりと飲み込んで、溶かして、
あなたの一部になれたなら、
ここまでやってこれたことを誇りに思います。

ありがとう。全部に感謝を。

平成23年11月28日
中森 つん
『夜の胎動』

愛は死を種子の枯死を望むのだ鉛のような夜の胎動

我々と同化しましょう 腫れあがる嘘つきどもの扁桃腺よ

カノンなら左脳の奥の引き出しの蓄音機にて視聴できます

空欄は異端の意思を受け入れず万年筆の減りゆくインク

生きながら考えながら変えながら乾かぬ海の至上命令

くちばしでめかしこみつつ半宵に集う名無しの阿呆鳥たち

降りそそぐやさしい光 それはもう火傷するほどやさしいのです

日曜の午後に群がる徒波はあまたの岩に打ち砕かれて

<「未来」No.718 2011年11月号>
『センチメンタルサーカス』

隙間からのぞくテントは鮮やかに回帰思考を君から奪う

夢・希望・愛を手中でジャグリングかまして座る王様のイス

くぐれずに火の輪をじっと見つめてる 月の向こうで光る太陽

地球儀をただのボールとして乗ればどこかの国が足裏の下

命綱なんてそもそもありもせず落ちたらそこで試合終了

心臓へ突き刺さるのは健全に生きる他人のまなざしナイフ

ちぐはぐな歯車たちが集まってサーカスはまだ朝を知らない

<「未来」No.717 2011年10月号>
『ラビット』

飛びこえてみたいもんだねこの国に広がっている暗雲とやら

寂しいとすぐに死んじゃう心ごと丸かじりする勇気はあるの?

とび跳ねた先で待ってる呼吸すらためらうほどの素直な虹が

「出来るかも」じゃなくて君がやるんだよ兎にも角にも両手伸ばして

ライフイズビューティフル さあ飛び出そうなんせ今年はうさぎ年だし

他人より少し欠けてるにんじんを咥えて走る脱兎のごとく

泣きはらす赤い瞳で睨んでる押し付けし合う「諸悪の根源」

<「未来」No.716 2011年9月号>
短歌研究新人賞にて予選通過作品に選ばれました。
物語性を重要視して制作した作品です。
たった2首しか誌上に載らないというのは可哀想だと思い、
ここに全30首をアップいたします。
ご感想よろしくお願いいたします。
(太字が誌上掲載作品)

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『セリフの多い料理店』

レストラン山猫軒の入り口に立ってわたしが見ているデジャヴ

「おしゃべりなウエイターなどおりますが、遠慮なさらずお入りください」

注文は多くなければそれでいい衣服も靴も脱がないでいい

「お客様、何名様でございます?砥石はいくつ必要ですか」

これはそう貸切りというやつだろう隠れ家的な雰囲気がある

「テーブルもイスもお客も一セットしかご用意をしておりません」

ピロリ菌検査を終えた井戸水の放射濃度はミリシーベルト

「ディナーではコース料理でございます。ただちに害の無い食材の」

円形に整列されたナイフたちきらきらきらり空気を切った

「金物をお外しします。アレルギー対応食の心がけをば」

否、否。と唱える時計 正しくは九時十分だと伝えてくれる

「思春期にいちごパンツを穿いていた働く女子のゼリー寄せです」

母猫の口移しにてツナ缶と鮭のスープをたいらげた後

「本日のシェフの気まぐれ生け捕りのドクターフィッシュ、お嫌いでした?」

カリカリなガリガリザリガニ煮込み過ぎギロチン行きの第一次シェフ

「グラニテは冷めた恋人、元彼の『別れた』メール添えになります」

しっぽの毛まみれうさぎのまるごとの左耳にはピアスホールが

「クリームを塗りたいところなのですが、ファブリーズからおかけしましょう」

十代目パトロール隊重大な任務としての合鴨ソテー

「さよならとさえずっている細雪サラダは少しぴりりとします」

どくだみの毒の煎茶の飲み方はまず遺書用に墨をすること

「星空のバーカウンターからお出しするごちゃのカクテル~雑ぜ繰り返し~」

時と間のあいだにぽとり落とされたホットケーキを埋めるシロップ

「コーヒーはしばしお待ちを。ジャコウネコ未だ便意がないと言うので」

プティフール気取った鳩のハイカラなバター風味の羽がもそもそ

「わたくしとオールドメイドしませんか。クイーンはもういりませんから」

裏庭の真白いバラが枯れている(ように見えるが青ざめている)

「ジョーカーをひいたのですか。おめでとうございます。さあ、いただきましょう!」

銀色の鍵穴の奥いっせいにぺろりと舌をなめずりぺろり

「当軒はセリフの多い料理店でしたが、あなた、話せませんね」

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岡本雅哉さん・田中ましろさんの主催する
『短歌探求落選展』に参加しております。
同じく受賞を逃した方々の力作がそろっておりますので、
そちらもどうぞご覧くださいませ。

短歌探求編集部ブログ
http://tankatan9.exblog.jp/
カフェオレと羊をめぐる冒険を午前八時の高田馬場で

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待ち合わせのミスドに居る彼のスタイルはいつも、カフェオレと村上春樹だ。ドーナツとパイを先にたいらげてから、二杯目のカフェオレでゆっくりと読み進める。「おはよう」と声をかけると、少し遅れて顔をあげ「おはよう」と返してくれるけれど、対面に座る私のことを気にする様子はなく、再び春樹の世界へと落ちていくのだ。申し訳ないが「クリスマスに馬鹿売れした人」程度にしか、その作者を知らない。だから、どうしてそんな熱っぽい瞳で文字列を眺めることが出来るのか、理解できなかった。
ポン・デ・リングを食べ終え、甘いカフェオレを飲み干す私に、彼が声をかけてくる。
「おかわりする?」
「ううん、今日はいい」
そう、とだけ頷いて、目線は春樹から離れない。そろそろ一限目の授業に向かう時間だが、彼は三杯目のカフェオレを注がれている。先に行くとも言えず、サボタージュは確定した。こうしたマイペースに振り回されるのが心地よくなってきた。
「さとう」
彼の親指が、私の唇へ触れた。
「砂糖、ついとるよ」
やわらかい圧力でなぞられる。さっきまでかさかさの紙に置いてあったはずのその指は、少し汗ばんでいた。ミスドについてから一度しか目があった覚えはないのに、ドーナツを食べ終えたことも、カフェオレを飲み干したことも、口のはしに砂糖がついていたことも、彼には全部わかっているのだ。
「…ありがとう」
砂糖を拭った親指は丁寧に舐めとられ、もとどおり本の上へと置かれる。意識していると悟られないように、そんな感情を抱いているとバレないように、自分の鞄から昨日買ったばかりの文庫本を取り出し、視線の行き先を与えてやった。しばらくして二人の間に会話はなくなり、ただぼんやりと彼の所作に気をめぐらせる。
そういえば、春樹のページをめくる音を聞いていない。

BGM:surface『だけどきみを離せない』
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プロフィール
HN:
中森つん
性別:
女性
自己紹介:
穂村弘さんに影響を受け、2009年、短歌にベクトルをあわせ出発進行。雑誌やメディアでの掲載・採用情報、結社詠草の情報置き場。尊敬する歌人は笹井宏之さん。
結社「未来」の「彗星集」所属しておりました。申し訳ございませんが、歌意の説明は控えさせていただいております。
2011年12月活動休止。2013年4月活動再開。
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